佐野に戻った当初から取り組んだ一ヶ所焼き(佐野)。
一つ大きな問題がありました。
作品をつくる素材は地域内で調達するとしても、それを焼く窯はどうするのか?
一般的には、
・ メーカーの製造した既製の窯を買う。
・ もしくは自分で作るにしても耐火レンガを買ってそれを組み上げて作る。
といった方法があります。
しかし、すべてを土地のものでまかないたい、ものづくりにおいて「買う」という行為を排したいとの思いから、それらの方法には納得がいきませんでした。
「それなら土で窯を作ればいい」
そう教えてくださったのは陶芸研究者・芳村俊一さんでした。1999年くらいのことだったと思います。
そもそも
「日本全国どこの窯場でも江戸時代以前は、その土地その土地の土や石を使って窯を作っていたのだから」と。
実際に芳村さんも土でできた窯を使っていらっしゃるとのこと、
いてもたってもいられず伊豆の芳村さん宅を訪れ、その窯を見せていただきました。
「かっこいいッ!」
窯そのものを「かっこいい」と思ったのは初めてでした。
使い込まれて焼き物のようになった内壁
レンガではなく大量の土を固め、それを焼いたわけですから、まさに大きな一つの焼き物なのです
実を言うと同じ頃、芳村さんと同じような助言をしてくれた方がもう一人いらっしゃいました。
近所のお年寄りです。
「昔ここらで炭を焼いていた頃、窯は山の土で作っていたんだから」
というわけです。
かつて「炭作り」はこの地域の重要な副業だったとのこと。
炭焼きのプロがたくさんいるんだからと教えてくれました。
伊豆から戻った僕はそのお年寄りが見守る中、さっそく山の土で窯を作ったのでした。
それ以降、十基以上窯を作っていますが、すべて山土を付き固めて作った土の窯なのです。